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表明保証条項とは、なんでしょうか

 表明保証条項とは、契約当事者の能力や契約の目的物の内容等に関する一定の事実を契約書に列挙し、当該事実が真実であることを、当該契約当事者の一方が、他方に対して表明し、かつ、保証するという条項です。
 民法上の瑕疵担保責任ではカバーされない範囲の問題に対応する目的で契約書に規定されます。

 「表明保証」とは、もともと、英米の契約書において用いられてた条項「Representations and Warranties」の訳語です。当初、日本では、M&A契約やファイナンス契約など、欧米への留学経験を経た弁護士が関与する案件の契約書においてよく見られましたが、最近では、中小企業が当事者となる契約においても、この表明保証条項があるものが散見されるようになりました。

 しかしながら、日本法における表明保証条項の法的性質、要件や効果に関する議論は、まだ十分になされているとはいえず、その位置づけは明確ではありません。
 そのため、実際に契約書において表明保証条項を定める場合には、どのような内容の事実について表明保証し(又はさせ)、表明保証違反があった場合にどのような効果を発生させるのかを常に念頭におきながら、表明保証に関する裁判例を分析し、文言を十分に検討する必要があります。
 特に、表明保証する事実に関して、「当事者の知る限り」や「当事者の知り得る限り」という文言を入れるかどうかによって、当事者が負う責任の範囲が大きく変わることから、実務上は、契約書の作成段階で、両当事者間において、この点に関する攻防が行われることが多いです。

 表明保証に関する裁判例としては、東京地判平成18年1月17日があります。これは、株式譲渡契約に関し、売主側の表明保証違反を認定したうえで、「原告が被告らが本件表明保証を行った事項に関して違反していることについて善意であることが原告の重大な過失に基づくと認められる場合には、公平の見地に照らし・・・被告らは本件表明保証責任を免れると解する余地があるというべきである。」と判示しましたが、結論として、原告の被告に対する損害賠償請求を認容したものです。
 また、東京地判平成19年7月26日は、訴外A会社の株式譲渡にかかる基本契約(以下「株式譲渡基本契約」といいます。)を締結し、その後A会社の株式を購入した買主が、売主の表明保証違反を主張して株式譲渡基本契約の補償条項に基づき損害賠償を請求した事件です。裁判所は、表明保証に関する補償条項について、「企業買収に応じるかどうか、あるいはその対価をどのように定めるかといった事柄に関する決定に影響を及ぼすような事項について、重大な相違や誤りがないことを保証したもので、同12条1項は、その保証に違反があった場合に損害補償に応じる旨を定めたものと解するべき」とし、結論として、買主の請求の一部を認容しました。