メニューを閉じる

従業員から退職の申し出がある場合に損害賠償請求できるか

従業員から、会社を辞めたいという申し出がありました。しかし、従業員の採用や教育には費用をかけてきましたし、本人のミスによる損害も出ており、何より今やめられても会社が困ります。会社に生じる損害を賠償するよう従業員に請求したり、給料から天引きしたりすることはできるのでしょうか。

  労働者には、原則として退職の自由が保障されており、使用者(会社)の承諾がなくても、一方的に辞めることが認められています。
 ただし、期間の定めのない契約の場合は「2週間前の予告」が、期間の定めのある契約の場合は「やむを得ない事由」が、それぞれ必要とされています。

  逆に言えば、これらの要件を満たせば、労働者は会社を辞めることはできるのです。「退職は3か月前までに申し出ること」といった社内規則があっても、そのような規則は通常無効です。

 また、確かに、労働者が故意や過失により会社に損害を与えた場合、会社は、労働者に対して損害賠償請求をする余地があります。もっとも、従業員の採用や教育にかかる費用や、従業員が働く上で通常生じ得るミスによって会社に生じた損害などは、労働者を働かせることで利益を得ている会社が負担すべき経営コストとして考えられていますので、当然に請求が認められるようなものではありません。

 また、賃金は全額を支払わなければ違法とされ、一方的に損害分と相殺することや、あらかじめ罰金として定めておくことは、法律で禁じられていますので、会社が損害賠償分を、給料から勝手に天引きすることはできません。