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内容証明郵便を受け取った経営者の方へ

 内容証明郵便を受け取った経営者の方は、大変驚き、困惑されていると思います。しかし、焦る必要は全くありません。

 そもそも「内容証明郵便」とはいったい何でしょうか?

 名称だけ聞くと大層なもののように聞こえますが、内容証明郵便も「手紙」の一種です。通常の手紙と異なるのは、「どのような内容の手紙を」、「誰が誰に出したのか」ということを郵便局が証明してくれる点にあります。なお、内容証明郵便を利用する場合には、合わせて「配達証明」を付けることが一般的ですが、その場合は、受け取った日時具体的には「○年○月○日に受け取った」ことも郵便局が証明してくれます。
このように、内容証明郵便はあくまで「手紙」ですので、受け取ったからといって、何らからの不利益が直ちに発生するものではありません(例外は後述します。)。過剰に慌てたり、恐れたりする必要はないのです。
 ただし、上記のとおり、内容証明郵便(配達証明付)を受け取るということは、「どのような内容の文書を」「いつ受け取ったのか」が記録されているということです。したがって、「そのような文書を受け取った覚えはない」と主張しても、一般的には認められないことになります。

 それでは、「内容証明郵便」を受け取ったら、どのように対処すればよいでしょうか?すぐに返事を出さなければならないのでしょうか?

 まず、内容証明郵便に書かれている内容をよく読みましょう。「手紙」ですので、内容を読まないことには何も始まりません。そして、内容証明郵便の中には、「○月○日までにご連絡ください。」「○月○日までにお金をお振り込みください。」などと記載されていることがあります。また、「期限までに回答がない場合には当方の言い分を認めたものとみなします」などと、回答をしなければ受け取った側が不利益を受けるような文言が記載されていることもあります。
しかし、このような文言には、法的な根拠や効力がないことが多いです(もちろん例外的に法的効力のあるものもあります。この点は後述します。)。発信者が一方的に設定した期限やルールに過ぎません。そのような場合には、書かれている内容に従わなければならないという強制力が発生するわけではありません。回答しないことによって直ちに相手の主張や、記載内容を認めたことにもなりません。
 したがって、回答期限が迫っているからといって、必ずしも焦る必要はありません。むしろ、よく考えずに安易に回答してしまうことで、その内容が後で不利に使われてしまうという可能性の方が高いです。
まずは冷静になって、書面に書かれた内容をよく確認し、そもそも回答をするか否か、回答をする場合にはどのような回答をするかについて、十分検討することが望ましいでしょう。

 ただし、内容によっては、特定の法的な効果が生じることがあります。例えば、賃料を滞納している状況で、「10日以内に滞納分の支払いがない場合、賃貸借契約を解除します。」という内容証明郵便が送られてきた場合、期間内に支払わないと、賃貸借契約を解除され、強制退去させられてしまうおそれがあります。
このように、書面の内容によっては、早期に適切な対応をしなければならないケースも存在します。

 また、内容証明郵便を送ってきたということは、相手は裁判なども見据えているということが推測されます。そうすると、受け取った側が何らの対応もしなかった場合、裁判などに持ち込まれてしまう可能性が高くなります。
 裁判になると、どうしても多くの時間や費用がかかります。他方、早めに相手と交渉することで、裁判を回避し、話し合いによる早期解決ができる可能性があります。
 そのような場合には、回答する法的義務の有無にかかわらず、早めの対応を検討する必要性があるでしょう。

 このように、内容証明郵便を受け取ったら、まずは文書の内容をよく確認し、①そもそも回答する必要性があるのか、②必要性がないとしても、何らかの回答をした方が良いのか、③回答する場合には、いつまでに、どのような手段で、どのような回答をすべきか、④その後の対応はどのようにしていくべきか等について、早い段階で弁護士に相談するなどして、十分検討することが必要です。
 いずれにせよ、過剰に慌てる必要はありませんが、だからといって、放置することはやめたほうが良いでしょう。

 内容証明郵便に書かれていることの意味が分からない、どのように対応をすべきか分からない、とお悩みの方は、是非お早めに弁護士までご相談ください。