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団体交渉をされないために

交渉

労働組合との労使関係の見直し

 会社と労働組合の間には、様々なルールが存在します。しかしながら、そのルールが本当に会社の実情に沿ったもので、トラブルの元になる可能性を有していないかということについて、トラブル予防の観点から見直すことも重要です。
 以下では、労働組合との労使関係を見直し、団体交渉を防ぐための確認事項について説明します。

(1)従業員の組合活動について

①所定労働時間内の組合活動
 労働組合員といえども、会社に労務を提供すべき義務があります。したがって、会社と労働組合で便宜供与の取り決めをしない限り、所定労働時間内に労働組合活動をしていけません。会社がそのような行為を黙認してきたのであれば、専門家と相談の上、労働組合と協議されることをお勧めします。

②労働組合の広報活動
 会社の施設内に、許可無くビラが掲載されていたり、組合旗が掲揚されていたりはしないでしょうか。特別な事情がない限り、労働組合は会社の許可なく会社の施設を利用してはいけません。会社がそのような行為を黙認してきたのであれば、専門家と相談した上で、あらためて労働組合と話し合うことをお勧めします。

(2)労働協約について

①労働組合員の人事異動
 労働組合の同意がなければ労働組合員の解雇ができないという旨の労働協約を締結している場合があります。そもそも労働者を解雇するのに労働組合の同意はいりません。このような労働協約については、労働組合に合意解約を申し入れてください。
 団体交渉を十分に重ねても、労働組合が労働協約の合意解約に納得しない場合は、労働組合法の手続きにもとづき、労働協約を解約してください。労働協約の合意解約については、トラブルを防ぐために、事前に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

②労働協約内容の独立
 労働協約を解約する場合は、一部解約ではなく、全部解約をした方がその効力を認められやすいため、内容ごとに別々の労働協約を締結した方が、解約する上では無用な混乱や紛争を防ぐことができます。
 例えば、掲示板の設置、組合事務所の貸与などについても、まとめてひとつの書面で労働協約を締結するのではなく、別々の労働協約を締結した方がよいでしょう。

(3)便宜供与の文面について

①事務所や掲示板の無償貸与
 有償で組合事務所や掲示板を貸与すると、法律上は賃貸借となり、賃借人である労働組合が保護されてしまいます。したがって、組合事務所や掲示板は無償で貸与してください。

②組合事務所や掲示板の変更・撤去
 便宜供与を定めた当初は問題がなくとも、その後の会社の経営状況によっては、組合事務所や掲示板の場所を変更する必要が生じてくる場合があります。
 そうした際、円滑に組合事務所や掲示板の場所を変更できるように事前に定めておきましょう。また、組合員が社内にいなくなったときには、速やかに掲示板や労働組合事務所を撤去できるように事前に規定を定めておくことも重要です。

③掲示物
 あくまでも掲示板は会社施設を利用してのものですから、会社の業務上の都合や会社の職場秩序維持の観点から掲示板の利用についても制限を設けるべきです。
 例えば、掲示板の場所や大きさ、掲示物の内容(中傷、誹謗、侮辱、事実に反する記載をしない)に関する規定が考えられるでしょう。
 また、協定を守らなかった場合は、組合事務所や掲示板を撤去するという旨の規定を設け、協定で定めた内容に関する効力を保持しましょう。

④協定の変更や廃棄
 協定の有効期間を定め、有効期間の1ヶ月前までに協定の変更や廃棄(協定不更新)の申し出ができることを定めましょう。業務上の都合により、これ以上、これまでの便宜供与をすることが出来ないのであれば、事前の申し出により協定が終了するように規定を定めておきましょう。

(4)労働組合員とその他の従業員との取り扱いについて

 労働組合員が職場の秩序を乱すような行為をしたのであれば、きちんと就業規則などの手続きにもとづいて懲戒処分をするべきです。
 それは不当労働行為ではありません。ただし、労働組合員以外の会社従業員が労働組合員と同じように職場秩序を乱す行為をしたのであれば、その場合もきちんと懲戒処分をしてください。労働組合員と他の労働組合員以外の従業員との処遇に差を設けてはいけません。

(5)団体交渉の進め方について

 会社側の出席者が2~3名なのに対し、労働組合側の出席者が十数名で、かつ会社側の出席者を取り囲む形で団体交渉が行われているなどということはないでしょうか。
 このような形態で団体交渉を行うと、誰が何を言ったのかが把握できなくなりますし、会社側の出席者が心理的なプレッシャーを受ける可能性があります。
 また、団体交渉が深夜まで及ぶ状態になっていたり、合意に至らなければ団体交渉が終了しなかったりすることも、正常な団体交渉とはいえません。早急に労働組合にルールの変更を申し入れるべきです。

(6)団体交渉の協議内容について

 労働組合の賃金ベースアップや賞与の要求金額をそのまま受け入れる必要はありません。
もちろん、十分な労使協議がなされた後に労働組合の要求を受け入れることは一向にかまいませんが、会社の経営状況が苦しいにもかかわらず、労働組合の要求を十分な協議もせず受け入れている会社もあります。
 労働組合法は労使双方の十分な協議を要求していますが、使用者が労働組合の要求を全て受け入れなければならないとは定めていません。
 主張すべきことは主張しましょう。労働組合からは様々な抗議があるかもしれませんが、客観的な資料にもとづいて十分な説明をしましょう。

 労働組合との労使関係は、団体交渉において重要なポイントです。良好な労使関係を構築して団体交渉を防ぐには、弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。