不動産会社向け・弁護士に相談すべき不動産トラブル
不動産業界において、法律知識は事業運営の基盤と言えるほど重要です。労務管理から契約書チェックに至るまで、法務面での万全な対応が求められます。
不動産は高額な商品であり、売買、賃貸、仲介といった取引形態に関わらず、複雑な法律知識が不可欠です。万が一、紛争が発生した場合、企業への影響は甚大となる可能性も否めません。
このように、不動産業界は法律との関わりが深く、リスクも高いことから、法的な知識を備えることは不可欠です。社内で法律知識を習得することも一つの手段ですが、社内教育は、コスト面だけでなく、社員の業務負担増加も招きかねません。法律知識の習得には、専門的な知識と経験が必要であること、法的な判断はケースバイケースであり、社内教育だけでは対応できない複雑な問題も発生する可能性があります。
そこで、弁護士との顧問契約を締結し、専門家の知見を得ることで、法的なリスクを抑えることができます。
不動産業における顧問弁護士の活用ケース
不動産業に関するご相談
顧問弁護士に相談することで、こんなお悩みを解決できます。
「契約書の作成に時間がかかる」
経験豊富な弁護士が、お客様に合わせた最適な契約書を作成し、契約締結までの時間を短縮します。
「法的なリスクを事前に把握したい」
不動産取引に潜む様々なリスクを事前に洗い出し、適切な対策を講じます。
「売買契約後にトラブルが発生した」
売買契約後のトラブル発生時には迅速に対応し、お客様の損害を最小限に抑えます。
「従業員の法知識不足が不安」
不動産取引に関する法知識の研修を行い、従業員のスキルアップをサポートします。
「家賃が滞納された場合、どのように対応すればよいか分からない」
賃料回収のための交渉や訴訟手続きを代行します。悪質な滞納者の場合、明け渡し請求の手続きを行います。
「悪質な入居者やテナントに困っているが、どのように対応すればよいか分からない。」
「賃貸仲介において、オーナーや入居者との間でトラブルが発生した。」
オーナーや入居者との間で交渉を行い、円満な解決を目指します。
従業員の労務管理や労務トラブルに関するご相談への対応
従業員との労務トラブルについても、不動産業の方からのご相談が多い分野です。労務トラブルには、以下のようなものが多く、場合によっては、外部の労働組合が介入して厳しい労使交渉を行うことになったり、労働審判等の裁判手続を行わざるを得なくなったりということで、問題解決に時間がかかる危険があります。
自社の内情に詳しい顧問弁護士に相談することで、トラブルの早期解決を図ることができるでしょう。
「従業員から未払い残業代の請求を受けた」
「パワハラ、セクハラの訴えがあった」
「問題のある従業員への指導をめぐるトラブル」
「問題のある従業員の解雇したい」
中小企業こそ顧問弁護士を有効活用
不動産取引には、契約書の作成やトラブル対応など、様々な法的な問題がつきまといます。中小企業の不動産会社様においては、自社で法務部門を設置することが難しいケースも少なくありません。
顧問弁護士を利用することで、これらの問題を専門家に委ねることができます。弁護士は、不動産取引に関する豊富な知識と経験に基づき、契約書の作成やトラブル発生時の対応など、幅広いサポートを提供します。
顧問弁護士を利用すれば法的なリスクを軽減し、安定した経営を実現することができます。契約書の作成やチェック、トラブル発生時の対応など、法務に関する業務を弁護士に委託することで、従業員の業務負担を軽減し、本来の業務に集中することができます。さらに、顧問弁護士は、法改正などの最新情報についても常に把握しており、貴社に適切なアドバイスで支援します。
顧問契約プラン
不動産業を営む顧問先会社インタビュー
不動産仲介業を中心に営む顧問先会社様のインタビュー記事を掲載しています。
不動産売買契約で失敗しないポイント
不動産は重要かつ高額な財産であるため、契約書を作成するのが一般であり、一般取引上は売買契約書を作成した時が契約締結の時となることが多いといえます。以下には、不動産売買契約で失敗しないポイントを掲載しています。個別の契約書については、弁護士にご相談されることをお勧めします。
(1)重要事項説明
不動産を購入する場合、宅地建物取引業者(宅建業者)を通じて購入することが多いですが、宅建業者から土地建物を購入する場合、宅建業者の側で重要事項説明が必要とされています。
具体的には、その不動産に関する登記された権利の種類・内容などの法定の事項について説明が必要になります。重要事項説明について宅建業者が事実と異なることを告げ、これを事実と誤認して契約者が契約の申し込み・承諾の意思表示をした場合は、売買契約を取り消すことができます。
(2)不動産登記事項を確認する
売主が真にその不動産を所有しているのか、所有しているとしても他の共有者がいるのではないか、抵当権などの制限物権が設定されているのか、を最新の登記事項証明書で確認する必要があります。
(3)現地(不動産)を調査する
建物を購入する場合、その建物が賃貸されていても通常、建物の借家権は登記事項証明書には表示されません。そこで、実際に建物を買った後に、その建物が賃貸されていたためにその建物を使用することができなかった、という不利益を被らないように、建物を実際に調査する必要があります。
(4)用途地域を確認する
土地を買ってその上に建物を建てようとする場合、建物の種類・建ぺい率・容積率・高さ制限などが法律により規制される場合があります。それが都市計画法上の用途地域です。
用途地域は、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、第一種低層住居専用地域など13種類があります。用途地域は、各地方自治体で販売している都市計画図で確認することができます。
(5)申込証拠金について
申込証拠金とは、マンションや建売住宅の分譲販売の際、購入希望者から販売業者に対し交付することのある金銭を言います。
申込証拠金は不動産取引実務の中で生じてきたものであり、法律上規定のあるものではありません。そのため、申込証拠金の法的性格については争いがありますが、購入希望者の購入意思の確認と、当該希望者の申込み優先順位の確保を目的として預託される金銭であるとする考え方が有力です。
また、申込証拠金は売買契約成立前に交付されるものであるとするのが一般的です。
申込証拠金を交付する場合は、売主から預かり証の交付を受けましょう。
申込証拠金は、売買契約をキャンセルした場合、返還される場合が多いですが、この返還をめぐって紛争になるケースもあります。
(6)売買契約に際しての、手付の支払いについて
不動産売買契約を締結する場合は、不動産の重要性から契約の締結の際、手付を交付することが多く行われます。
手付はいわゆる解約手付と推定され、契約の相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄することによって契約が解除でき、売主は手付の倍額を支払うことによって契約解除ができます。また、契約が解除された場合は互いに損害賠償請求ができません。これはあくまで法律上の推定ですから、当事者でこれと異なる取り決めを行うこともできます。
そこで、手付を交付する際は売買契約書内において手付の法的性質を明記する必要があります。
なお、宅建業者が売主となっている場合は、法律上、解約手付となります。相手方が契約の履行に着手した場合は、手付によって解除することはできなくなります。
(7)購入した建物に欠陥(瑕疵)があった場合
従来は、民法上の請求として損害賠償請求および契約の目的を達成できない場合に契約を解除することができるにとどまっていました(いわゆる旧瑕疵担保責任(契約不適合責任))。また、この瑕疵担保責任を追及できる期間は、瑕疵の存在を知ってから1年以内に限られていました。
しかし、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、請求できる範囲が拡大しています。具体的には、新築住宅の取得契約について、基本構造部分の瑕疵担保責任を、建物の完成引渡から10年間請求できるようになります。瑕疵担保責任の内容も、損害賠償請求・解除だけではなく、修補請求ができるようになります。
ちなみに、品確法は平成12年4月1日以降に締結された新築住宅の取得契約(売買・請負)について適用されます。
(8)農地の売買に関する注意点
農地を売買する場合で、買主がその農地を農地として使用する場合は、農業委員会または都道府県知事の許可が必要となります。また、買主が農地を農地として使用しない場合も、原則として許可が必要となります。農地法の許可が必要な場合において、許可よりも先に売買契約を締結しても契約は有効ですが、土地所有権は許可がなければ移転しません。
そこで、農地を売買する場合は、契約書に「許可が得られなかった場合は、当然に契約を解除する」との条文を入れる必要があります。
個別の契約書については、弁護士にご相談ください。
不動産賃貸契約で失敗しないポイント
以下には、不動産売買契約で失敗しないポイントを掲載しています。
個別の契約書については、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
(1)土地賃貸借契約の更新
土地賃貸借契約の期間が満了した場合、その契約を更新するか否かが問題となります。
更新には当事者の合意に基づいて更新される合意更新と、当事者の合意に基づかない法律上の法定更新があります。
1.合意更新
土地賃貸借契約は当事者の合意に基づいて更新でき、これを合意更新と言います。
契約期間は当事者が定めなかった場合で現在の借地借家法が適用される場合は、初回の更新ならば20年、2回目以降の更新ならば10年です。当事者が20年より長い賃貸期間を定めることもできます。
また、借地借家法が制定される以前の旧借地法が適用される場合は、堅固建物(石造り、土造り、煉瓦造りなど)の場合は30年、非堅固建物については20年です。
2.法定更新
借主が貸主に対し更新を請求し、建物が存在する場合は、貸主が遅滞なく異議を述べない限り従前と同じ内容で契約が更新されます。また、借主が更新を請求しなくとも借主が土地の使用を継続し建物が存在する場合は、貸主が遅滞なく異議を述べない限り、やはり従前と同じ内容で契約が更新されます。貸主の異議には正当事由がなければなりません。
(2)建物賃貸借契約の更新
1.建物賃貸借の合意更新
建物賃貸借を合意で更新した場合は、契約期間は最長で20年であり、1年未満の期間を定めた場合は期間を定めなかったものとみなされます。契約期間を定めなかった場合やそのようにみなされた場合は、解約申し入れの対象となります。
2.建物賃貸借の法定更新
当事者が期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の意思表示をしなかった場合、または契約条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかった場合は、従前と同じ内容で契約を更新したものと見なされます。また、貸主から更新拒絶の通知がなされた場合であっても、借主が借家の使用を続けているのに、貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合も同様です。ただし、期間の定めがないものとされ、解約申し入れの対象となります。
なお、貸主の更新拒絶の通知には正当事由が必要とされます。正当事由の内容については、土地賃貸借の更新拒絶と同じです。
(3)解約申し入れとは
建物賃貸借で、期間の定めがない場合または定めがないとみなされる場合は、当事者は双方とも申し入れによっていつでも建物賃貸借契約を終了させることができ、これを解約申し入れと言います。
ただし、貸主の側から解約申し入れをする場合には、正当事由が必要とされ、しかも賃貸借契約が終了するのは解約申し入れの日から6か月後です。
正当事由の内容については、土地賃貸借の更新拒絶と同じです。
(4)契約期間の途中での家賃の値上げ・値下げ
契約で定めた以上、家賃を契約期間の途中で一方的に値上げ・値下げできないのが原則です。
ただし、当事者で合意した場合は契約内容を変更できます。また、裁判により賃料の値上げ・値下げをすることができる場合があります。裁判で賃料を変更する場合、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは調停を申し立てる必要があります(調停前置主義)。調停で不調となった場合に、訴訟を提起します。裁判になった場合、以下の事情等を総合判断して賃料を値上げ・値下げするかを判断します。
- 土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減
- 土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動
- 近傍同種の建物の借賃の比較
(5)敷金の返還
敷金とは、不動産特に建物賃貸借の際、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭のことを言います。
賃借人が賃貸人に家賃を支払わなかったり、建物の原状回復が必要となり賃借人がこれを負担する場合に、賃借人の負担額が差し引かれて、建物明け渡し時に返還されます。
建物の賃貸借契約においては原状回復は賃借人の負担とされているのが一般的です。どんなにきれいに使ったとしても、ルームクリーニング代金は負担させられるので、全額は戻ってこないことが多いです。ただ、返還金額が不当に低い場合は争うべきです。