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立ち退き・明け渡し対策

住宅用・事業用物件を問わず、立退きに関するご相談をお受けします。

賃貸人(オーナー)から賃借人(テナント)への立退き請求や、オーナーから立退き請求を受けている賃借人・テナント様の法律相談のいずれでも対応可能です。

建物所有者(兼賃貸人)が、賃貸期間の満了の際に更新を拒絶して立ち退きを求める場合や、賃貸期間の定めがなく解約の申し入れを行った上で立ち退きを求める場合には、法律上「正当な事由」とよばれる事実関係が必要となります。さらに、「正当な事由」が存在する場合でも、立退き料を請求されることがあります。立退料の金額は、法律に規定があるわけではなく、裁判所において賃貸人・賃借人それぞれの事情を考慮して個別に決められます。

賃貸人からすれば、立退料は支払いたくない、支払うとしてもできる限り少額にしたい。賃借人からすれば、建物を明け渡したくない、建物を明け渡すとしてもできるだけ多額の立退料をもらいたい、というのが当然の要望です。

当事務所は、それぞれの立場に応じて対応が可能です。また、示談交渉だけでなく訴訟で立退料を争う事件についても多数の実績がありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

立退き・明け渡し請求の流れ

  • 賃借人が家賃を支払ってくれない
  • 賃借人以外の人が住んでいるようだ
  • もう信頼関係が壊れているから出て行ってもらいたい

いくら賃借人が家賃を滞納しているといっても、大家さんは賃借人の同意なく部屋を片付け、明け渡しを実現することはできません。たとえ相手が滞納者であっても、賃貸借契約を解除した後であっても、大家さんが賃借人に無断で建物内に立ち入ることは、原則として違法であり、損害賠償や刑事処罰を受ける可能性があります。しかし、法律に則った手続を適切に行えば、問題を解決することができます。

立退き・明け渡し請求の流れを説明します。

  • 物件の調査
  • 内容証明による催告・交渉
  • 占有移転禁止の仮処分
  • 家賃請求・明け渡し訴訟
  • 強制執行

物件の調査

まずは物件の現況を調査します。物件の調査は、その後に予定している手続の準備のために必要です。特にその物件に実際に住んでいる者は誰か、この判断を誤るとその後の訴訟が無駄になってしまう可能性もあります。実際の居住者(占有者)がよく分からない状況であれば、占有移転禁止の仮処分を申し立てる必要があります。以下はこれまでの物件調査で実際に取り扱ったケースです。

  • 賃貸していた敷地内に勝手に建物が建てられていた
  • 一部無断改築されて建物の改築スペースに所有者が把握していなかった会社が介入していた

内容証明による催告・交渉

物件調査の結果にもよりますが、実務では、賃借人から事情を聞き、話合いや交渉を行うことで裁判手続を行わずに解決できるケースもあります。まずは内容証明郵便の送付によって、家賃の支払い催告と賃貸借契約の解除(解約)を求める意思表示を行います。その上で、話し合い・交渉を開始します。

占有移転禁止の仮処分

賃借人が多重債務などを理由に行方不明になり把握できていなかった占有者がいるというケースがよくあります。このような場合、占有者は物件の明け渡しを妨害するために、わざとその「占有」という状態を他の第三者に移してしまうことがあります。明け渡しの判決を得る前に他の人に「占有」が移ってしまうと、獲得した判決が無意味になります。占有移転禁止の仮処分はこれを防ぐための保全手続です。

家賃請求・明け渡し訴訟

賃借人が話し合いや交渉に応じない、あるいは、そもそも賃借人が行方不明などの場合、裁判所に対し明渡訴訟を起こします。裁判所の判決に基づく明け渡しは、大家さん、不動産オーナーにとって一番リスクが少なく確実な手段です。手間と費用はかかりますが、弁護士にお任せいただければ安心・安全です。賃料を滞納していることを理由に明け渡しを求める場合、多くの場合1回の審理で裁判は終了して、1~2週間で判決が出るのが通常です。

強制執行

勝訴判決を獲得しても、賃借人や占有者が開き直って判決を無視し任意に明け渡さない、または賃借人が行方不明の場合などは、次のステップに進み、強制執行手続によって強制的に明け渡しを実現していくことになります。このとき、家賃の滞納(賃料債権)がある場合は、賃借人の部屋にある動産(家具や貴重品等)を換価して滞納家賃に充当することが出来ます。ただし、実際には、家賃滞納を理由に明け渡しを求める事案では、換価に適する動産(資産性がある動産)が存在しないことがほとんどで、むしろ廃棄処分費用が発生するケースの方が多いです。

強制執行による明け渡し手続が完了すれば、明渡事案の手続はすべて終了です。

立退きを求めることが出来る条件

賃借人は借地借家法で保護されていますので、一度賃貸借契約を結ぶと、簡単に立退いてはもらえません。「正当事由」があるか、立退き料で正当事由が補強できなければ、たとえ訴訟提起したとしてもなかなか明渡は認められません。では、どのような場合に立ち退きが認められるでしょうか。

(1)更新のない定期借家契約

契約更新のない定期借家契約にしておくと、法律上は契約期間の満了を理由に賃借人に対し立退き請求をすることができます。原則として、賃借人は立退きを拒絶することはできません。ただし、定期借家契約はその分賃料は相場よりも低く設定することになるのが通常です。

(2)大家さんと賃借人との信頼関係が損なわれた場合

賃借人側に家賃滞納などの契約(債務)不履行があり、賃借人と大家さんとの信頼関係が損なわれている場合、立退きが認められることもあります。1~2ヶ月程度の未払いでは、認められる可能性は低いでしょう。3ヶ月以上滞納があり、さらに今後も支払いの見込みがない場合には、信頼関係の破壊が認められる可能性がありますので、立退き・明け渡し請求を検討してもよいでしょう。

(3)建物の老朽化による立ち退き

老朽化の度合いによりますが、老朽化によって倒壊の危険性があるような場合を除いては、無条件の立退きは認められません。立退きは「引越し費用」「転居先の家賃が今までより高くなる」「住環境が変化する」といった理由から、一般的には賃借人にデメリットが多くあります。賃借人に理由を十分に説明し、引越代や相当額の立退料を提供すれば、話し合いによって解決することもあります。

当事務所の経験上、大家さんが老朽化を理由に退去を求めたいことを説明し、余裕のある退去期間を設定すれば応じていただけるケースが多いと思います。立退きを考えられている場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

立退料について

「立退料はどれくらいが妥当ですか」というご質問をよくいただきますが、立退料を計算する、定型的な計算式はありません。立退料は、大家さんと賃借人の事情を考慮して決定されます。

具体的に考慮する事情は以下など挙げられます。

*大家さんの事情

  • 大家さんの年齢、職業、資産、経済状態、健康状態
  • 立退きの理由(建物の状態、経過年数、老朽の度合い、修繕費用、近隣状況等)
  • 契約内容(契約期間、更新状況、契約時の特殊事情、近隣との賃料比較等)
  • 立退き請求後の交渉経過

*賃借人側の事情

  • 賃借人の年齢、職業、資産、経済状態、健康状態
  • 賃借人の状況(通勤・通勤時間、家族構成等)

上記の事情を前提に、次のような費目を、どこまでどの程度負担するのかということを検討することになります。

  • ア 移転実費(引っ越し費用、敷金礼金仲介手数料) 
  • イ 借家権(借地権)価格
  • ウ 営業目的利用の場合は営業補償 
  • エ 生活利益(慰謝料的なもの)

ウについて、例えば単なる倉庫で代替物件があれば、明け渡しで営業的損失が生じるとしても差額家賃や関係先への連絡等のコスト程度になるでしょうし、他方で駅前立地の販売店であれば、相当高額な営業補償が必要となるでしょう。

裁判例を検討する限りでは、上記の費目の合算額を単純に認定するわけではなく、たとえば上記のような費目も考えて、契約期間中の家賃全額を立ち退き料とするなど、ある程度の「裁量」により判断しているようにも感じられます。具体的にどれくらいの金額にしたらよいかは、弁護士に相談されることをお勧めします。

土地活用のための明け渡し

土地の有効活用のため「契約更新を拒絶したい」、「契約更新を拒絶できるでしょうか」、というご相談がよくあります。法律的には、更新の拒絶に正当事由が認められるのかという議論があります。そして、このようなケースではそもそも訴訟になったら立ち退き料を払っても明け渡しが認められないケースもあり得ることは念頭に置く必要があります。

問題となった裁判例の多くはバブル期のもので、現在の経済状況にそのまま適用できるかは疑問ですが、裁判例では相当高額の立ち退き料を要求しているケースがほとんどです(現行家賃の○年分等)。最終的にはこのような高額な立退料が必要となるリスクも考慮すべきです。

他方で、当事務所の経験上は、現実的には交渉(というよりも「退去のお願い」)で決着することが多いため、理論的には多額の立ち退き料が必要なケースであっても比較的負担の軽い条件で解決するケースもあります(退去時期の緩やかな設定、一部家賃免除、代替家屋の提供等)。

 過去の解決事例をいくつか紹介します。もちろん、ケース事の解決になりますので、全ての事案で同じような解決結果を保証するものではありません。

解決事例1「居住用平屋」を、「土地有効利用目的」で明け渡し請求した事案

事案の概要

ある土地のオーナーが、建設会社をして所有地へ建物を建築させ、当該建設会社の子会社が建築した建物を一括借り上げして管理を行う形態の不動産経営を行っていました。最近、最寄りに駅ができた土地があるため、同じようにアパートを建設することを考えていましたが、対象土地上には、オーナーが相続した古い平屋が複数存在し、それぞれ先代から借家に出していました。

そこで、平屋が老朽化していることなどを理由に更新を行わない旨や、取り壊しをしたいので退去していただきたい旨を個別に通知しました。建設会社が事実上間に入り、個別の借り主と退去交渉を進め、時間はかかりましたが、一戸を除いて全て退去に協力してもらいました。しかし、一戸は、高齢の生活保護受給者で耳も遠く、立ち退きの提案についても「自分は先が短いから、死ぬまでここに住みたい」との意向を変えず、交渉は暗礁に乗り上げました。

オーナーの相談を受けた当事務所では、借主が高齢であることから相続の発生まで待つことも選択肢であることを説明しましたが、交渉が決裂したら諦めるという前提で、弁護士に明け渡しの交渉を一任することにしました。

弁護士介入後から解決まで

弁護士が事情を確認したところ、家賃は月額3万円で、法定更新後20年以上が経過しており、当初の契約書は紛失していました。

そこで、まず借主の意向を確認することにしました。しかし、知らない人からの通知書面は全て受領を拒絶するという対応とのことであったため、オーナーにお願いして借主を呼び出してもらい、対面して事情を聞くこととしました。面談に際して、予め退去の合意書を作成し、当日の話の流れによっては、そのまま書面に署名してもらうこともできるように準備して面談に備えました。

借主から話を聞くと、オーナーとの関係はこれまで良好であったため、オーナーに迷惑をかけるつもりはないという対応でした。

そこで、もし借主が死亡した場合、身寄りがないことから後の処理が大変になることを説明しました。また、同じような家賃の物件を建設業者において確保すること、転居の手伝いをすることなどを説明したところ、納得の上でその場で退去の同意書に署名していただくことになりました。

その後、建設会社の協力のもとで、合意に従って無事に退去が完了しました。

解決のポイント

本件は、裁判を行うと立ち退き料を支払っても退去が認められない可能性がある事案でした。交渉が決裂した場合、相続発生まで待つという選択肢をオーナーが理解していたため、弁護士が交渉に入ることができました。オーナーと借主とのこれまでの関係が良好な事案であったため、借主の不安を除去することや、オーナーも困ることを説明することで、退去の合意を取り付けることができました。加えて、跡地にマンションを建設する予定の建設会社が全面的に協力し、転居先の手配から転居まで手配したため、スムーズに進めることができたといえます。

解決事例2「事業用物件」につき「土地有効利用」のため解約を求めた事案

事案の概要

ある土地のオーナーが、大手自動車メーカーの子会社(ディーラー)との間で、借主が、建設協力金を支払い、その建設協力金をもとにオーナーが営業所兼車庫を建設し、これを賃貸する契約を締結していました。

契約から数十年経過しており、建設協力金も既に全額支払い済みとなっている状況において、オーナー(の推定相続人)が相続税対策の観点からアパート建築を考え、建設会社を通じて借主会社の担当者と話しました。すると、退去の方向で考えているようであるが、借主会社は、明確な回答を拒否している状況でした。

オーナーの相談を受けた当事務所では、営業補償として相当額の支払いを覚悟することが受任の前提であることを説明したところ、余剰資金が十分にあるので、将来を考えてある程度高額であっても支払いをして退去してもらいとの意向であったため、受任することになりました。

弁護士介入後から解決まで

事前の協議内容によると、必ずしも明け渡しを拒否しているわけではないようでした。そこで、まずは協議したい旨通知したところ、担当者から連絡があり、退去には応じる意向はあるようでした。

明確に回答しなかった理由は、本社決済が必要なこと、代替地の候補が見つかることが決済の条件であったことの他、従前間に入っていた担当者の高圧的な態度と通知が気に入らなかったという感情的な問題もあったようです。

そこで、明け渡し期限の設定を急がず、退去の条件を先に詰めることで話しをすすめたところ、立ち退き料は0、その代わり原状回復義務を負わないこと等の条件で合意が出来ました。その後代替地も見つかったため、そのまま合意書を締結し、スムーズに明け渡しが実現できました。

解決のポイント

一般的にオーナー様は、具体的な明け渡し時期について結論を急ぎがちの傾向があります。もちろんその後の建設の計画や資金の融資計画などがあるからやむを得ないことと思います。しかし、裁判になった場合などを考えると、相手方の意向も尊重しながらある程度余裕を見て話しを進めないと、かえってこじれる可能性があることも計画にいれておく必要があります。

解決事例3「事業用物件」につき「土地有効利用」のため解約を求めた事案

事案の概要

ある土地のオーナーが、相続対策・土地有効利用のため、ちょうど更新時期を迎える倉庫兼営業所(賃借人は、大手上場会社)を取り壊してマンションを経営することを考えました。不動産会社のアドバイスを受けて内容証明を作成して発送し、その後不動産会社の担当者が賃借人会社の担当者に明け渡しの意向確認に赴いたところ、一切交渉には応じてもらえないという状況でした。

そこで、オーナーから相談を受けた弁護士が、建物自体は老朽化とまでは言えないこと、家賃も月額約数十万円と低額ではないこと、賃借人の事務所単位の売上げが相当高額であることが想定されたため、営業補償の話になると支払い困難な金額の提示を受ける可能性があることも説明しましたが、まずは交渉をして欲しいとのことでしたので、交渉の依頼を受けることになりました。

弁護士介入後、解決まで

弁護士が、支店担当者より意向を聴取したところ、オーナーから退去を要求された以上、退去はやむを得ないと考えており、代替地を探すことにするが、許認可の関係があるため、ある程度の時間が必要という趣旨の話しでした。立退料についても、敷金と同額程度をいただければ良いという回答でした。

そこで、退去を前提に許認可の進展を定期的に情報交換するかたちで交渉を進め、代替地の建築許可が下りた段階で和解書を締結し、無事明け渡しに至りました。