従業員を解雇する場合
日本の労働法制では、従業員を簡単に解雇できませんので、ご注意を!
「従業員に能力がない」そのような場合、経営者はつい「解雇して当然」と思ってしまいがちです。
しかし、今の日本の労働法制では、従業員をすぐに解雇するのは大変難しいのです。
contents
1 解雇するために必要な条件
2 解雇に至るまでの手続
3 退職勧奨とは?解雇する前にやるべきこと
4 不当解雇の効果・影響
5 解雇する場合の注意点
6 解雇無効を主張されたら
7 専門家への相談をおすすめします
解雇するために必要な条件
解雇が有効とされるためには、解雇権を濫用したと判断されないような客観的・合理的理由が必要です。もし、客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇権を濫用したものと判断され、解雇が無効となります(労働契約法第16条)。
すなわち、従業員を解雇する場合には、その従業員が解雇されるに足る客観的・合理的理由があると認められるかどうかを十分に調査する必要があります。
解雇に至るまでの手続も重要
解雇事由が正当なものだったとしても、解雇に至るまでの方法が慎重さを欠いている場合には、解雇権の濫用と判断されることもありますので注意が必要です。解雇権の濫用と判断されないためには、解雇される者の選定が合理的であるかどうか(被解雇者選定の合理性)のほかに、解雇を回避するための努力を尽くしたがどうか(解雇回避努力)、事前に説明・協力義務を尽くしたかどうか(解雇手続の妥当性)が争点になってきます。つまり、できるだけ解雇以外の方法によって解決しようとしたという経緯が必要になります。
例えば、無断欠勤の多い社員を解雇したい場合には、最初から懲戒解雇を行うのではなく、まずは戒告・訓戒などの解雇以外の懲戒処分、それでも改まらない場合には諭旨解雇を試みる必要があります。それも困難な場合に、最終手段として懲戒解雇を考えるというステップが重要です。
また、普通解雇ではなく、懲戒処分として解雇を行う場合には、弁明の機会を与えるなどの要件も必要となります。その意味で、原則として普通解雇とすべきであり、懲戒解雇は慎重に行うべきでしょう。
退職勧奨とは? 解雇する前にすべきこと
安易に解雇の手続を進めてしまった場合、従業員との間で紛争を招き、多大な労力を強いられることにもなりかねません。実際、使用者としては解雇が当然と思って解雇した事案について、後日裁判所でその効力が争われた結果、多額の和解金を払わざるを得なくなったケースも存在します。したがって、解雇したい従業員がいる場合は、その解雇事由を慎重に検討するとともに、慎重かつ適切な手続を行わなければなりません。
円満解決をするには、次ののような方法を用いて合意退職(任意退職)に持ち込むことが妥当な方法と言えます。
不当解雇の効果
裁判によって解雇が無効とされた場合、解雇されなければ得られたであろう賃金の支払いや、被解雇者の職場復帰を会社が命じられることがあります。もしも職場復帰した被解雇者が、会社に一方的に不当解雇されたなどと声高に主張した場合、他の従業員が会社に対する不信感や嫌悪感を抱くようになることは必至です。
よって、従業員を解雇する場合は、極めて慎重な判断と対応が必要です。
解雇する場合の注意点
解雇する場合は、被解雇者に対して解雇する旨を通知する必要があります。解雇予告は、少なくとも30日前に行わなければなりません(労働基準法第21条1項)。30日前までに解雇予告をしなかった場合は、30日以上の平均賃金を支払うか、予告してから30日が経過するまで解雇は成立しません。これは懲戒解雇の場合も同様です(但し、懲戒処分として解雇を行う場合には、懲戒処分一般に妥当する手続き的規制がありますので注意が必要です)。
解雇無効を主張されたら
一度は解雇したものの、時間が経過してから被解雇者が解雇の無効を主張してくる可能性も十分に考えられます。この場合、まずは解雇無効を主張する理由を確かめることが重要です。解雇事由に納得がいかないのか、解雇手続の不備を問題としているのか、あるいは、どのような事実を主張しているのかによって、会社が取るべき対処方法も変わります。
したがって、労働者から解雇理由を明確にするように求められることがあるように、使用者側としても、解雇無効を主張されたら、まずは主張理由を明示するように求める書面を被解雇者に送りましょう。これに対する被解雇者の反応を見ることで、解雇無効の主張が単なる言いがかり的なものなのかを判断することができます。
被解雇者の主張がはっきりしたら、弁護士に事情を説明し、その後の対応を相談しましょう。そのまま放置してしまうと、解雇無効の訴えが提訴されるおそれもあります。また、不誠実な対応をした場合、そのような対応に対する慰謝料をも請求されるおそれもあります。したがって、迅速かつ適切に行動することが重要です。
専門家へ相談をおすすめします
労働訴訟に発展してしまうと、膨大な労力とコストを費やすことになりかねません。トラブルを避けるためには、解雇を言い渡す前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。