パワハラで訴えられたら
パワハラ問題
パワハラとは、地位や権力を持つ相手により行われる理不尽な命令や言葉の暴力のことをいいます。
絶対に達成不可能なノルマを課すことや、逆に全く仕事を与えないということもパワハラとなります。
パワハラに関する直接の法令はありませんが、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」は、職場のパワーハラスメント(パワハラ)とは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義しています。このようなパワハラが認定されると、直接の行為者のみならず、会社も使用者として損害賠償を命じられるケースもありますので、実態を把握したら迅速な措置をとる必要があります。
セクハラもパワハラも、いずれもどこからがハラスメントであるのかという線引きが明確ではないため、注意が必要です。
個人(従業員)から相談を受けた場合には、見てみぬふりをせず、適切に対処をするべきです。対応がおろそかになり、従業員が自ら行動を起こした場合、企業の信用度が社会的にも著しく低下してしまいますし、会社が賠償責任を問われることもあり得ます。
パワハラへの対応
パワハラが発覚した場合の会社の対応
(1)実態調査
パワハラと言っても、その境界線が明確に定められるわけではありません。
上司、部下双方に認識のずれや見解の違いがある可能性があります。
パワハラの相談や申告があれば、まず実態調査を行い事実関係の把握に努める必要があります。
該当する上司や部下へのヒアリングの他に、現場を目撃した従業員へのヒアリング、上司と部下のメールのやりとり等についてチェックを行うべきです(但し、メールのチェックについては、どのように実施するか、プライバシーの問題があるので、慎重な検討が必要です)。
ヒアリングや調査を実施する場合は、「いつ」「だれが」「どこで」「何をしたのか」について記録するようにしましょう。
また、上司と部下との言い分が食違っている場合、メール等の客観的な資料の存在がとても重要となってきます。
(2)懲戒処分の検討
パワハラが認められた場合には、パワハラを行った従業員に対しては懲戒処分を検討すべきです。
ただし、注意しなければならないのは、直ちに懲戒解雇を行うということはできないということです。
なぜなら、後に、懲戒解雇された従業員から「解雇権の濫用」等を理由に不当解雇だとして、
訴訟等を提起された場合、裁判所からはパワハラを防ぐ措置を怠っていた等と判断され、解雇するまでの理由にはならないとし、懲戒解雇が無効とされる可能性が高いためです。
パワハラの内容にもよりますが、まずは、譴責、出勤停止等の軽い処分等を過去の処分事例を考慮しつつ、就業規則に基づいて行うべきです。
(3)人事異動
パワハラを行った従業員を別の部署に異動することも一つの手段です。
また、その従業員が管理職であれば、マネジメントの役割を果たしていないという理由で降格することを検討してもいいでしょう。
事前に定められている就業規則にもよりますが、これらの処分は懲戒処分に該当しないため、
懲戒処分と同時並行で行うことも可能です。
パワハラ問題への弁護士の対応
パワハラについても、起こってしまった場合には、セクハラと同様に次の3つの局面が考えられます。
(1)法的助言
詳しい事情を伺った上で、
- まず、当該行為がパワハラ行為にあたるか
- 次に、パワハラ行為があったとすればどのような処分が適切か
- パワハラ行為でなかったとすれば、その後従業員にはどのように対応すべきか
等を専門的観点より適確にアドバイスします。
(2)示談交渉
パワハラ行為を受けたと申告してきた社員、またはパワハラ行為を行ったとして懲戒処分等を受けた社員が、会社の対応に不満を持ち、不適切だったとして争ってきた場合には、弁護士が御社に代わって交渉にあたります。
(3)訴訟
上記のアドバイスに従って対応したにもかかわらず、訴訟を提起されてしまった場合には、事実関係をよく把握している弁護士が御社の対応が適切であったことを代弁して戦います。
また、上記のアドバイスを受けずに訴訟を提起されてしまった場合でも、弁護士が出来る限り御社の対応の正当性を主張し、ダメージが最も少なくなるように最大限努力します。
なお、このような問題が起きないように事前のリスクマネジメントも必要に応じて社内で検討するべきでしょう。たとえば、当事務所と顧問契約を締結し、従業員の相談窓口として当事務所を利用していただくことも可能です。