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秘密保持・競業避止に関するご質問1 当社の従業員Aがライバル企業Bからそそのかされて当社の顧客リストや仕入先リストをライバル企業Bに提供しているようです。従業員Aやライバル企業Bに対してどのような請求ができますか。

当社の従業員Aがライバル企業Bからそそのかされて当社の顧客リストや仕入先リストをライバル企業Bに提供しているようです。従業員Aやライバル企業Bに対してどのような請求ができますか。


 

 まず、顧客リストや仕入先リストが不正競争防止法上の「営業秘密」に該当する場合には、従業員A対し、営業秘密侵害を理由として損害賠償を請求できます。  
 また、在職中の従業員は、会社に対して、雇用契約に基づく秘密保持義務を負うとされておりますので、雇用契約上の秘密保持義務違反を理由として損害賠償請求をすることも考えられます。  

 ライバル企業Bに対しては、不正競争防止法上、営業秘密侵害を理由とする損害賠償や顧客リストや仕入先リストの使用・開示の差し止めを請求できる可能性があります。  
 
 また、雇用契約上の秘密保持義務は、会社と従業員Aとの間で生じる義務ですから、第三者であるライバル企業Bに対して雇用契約上の秘密保持義務違反を主張することはできませんが、ライバル企業Bが秘密保持義務の存在を明確に認識しながら貴社を害する目的で情報を入手した場合など、具体的事情によっては不法行為等を理由として損害賠償を請求する余地もあると考えられます。  

 もっとも、実際に損害賠償を請求する際には、従業員Aが顧客リスト等をライバル企業Bに提供したことを立証する方法や、顧客リスト等の漏えいにより会社に具体的に生じた損害額の計算等につき、専門的な知識が要求されますので、一度専門家に相談することをお勧めします。

秘密保持・競業避止に関するご質問2 不正競争防止法における「営業秘密」とはどのようなものですか

不正競争防止法における「営業秘密」とはどのようなものですか。


 

 「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、
①秘密として管理されていること(秘密管理性)、
②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、
③公然と知られていないものであること(非公然性) が要件とされています。  

  3つの要件の中でも特に問題となりやすいのは秘密管理性です。秘密管理性の判断にあたっては、㋐当該情報にアクセスできる者が制限されていること(アクセス制限)、㋑当該情報にアクセスした者に当該情報が秘密であることが認識できること(客観的認識可能性)が考慮されます。  

  したがって、例えば、顧客情報が他の情報とは区別された場所に保管され、その情報にアクセスするためにはパスワードが必要であり(アクセス制限)、顧客情報が記録されている媒体に「秘密」などと記載してある(客観的認識可能性)場合には、秘密管理性が認められやすくなります。  

  そのほか、有用性や非公然性についてもそれぞれ問題がありますが、ここでは割愛します。

  一般的には、顧客情報、販売計画、製造方法などが「営業秘密」にあたるとされていますが、上述のように、「営業秘密」に該当するかは、当該情報の管理状況等により異なり、具体的な判断が要求されます。

秘密保持・競業避止に関するご質問3 就業規則に秘密保持義務に関する規定を定めるメリットは何ですか。

就業規則に秘密保持義務に関する規定を定めるメリットは何ですか。


 

 在職中の労働者は、明示的な特約がなくても、雇用契約上の付随義務として秘密保持義務を負うとされています。そのため、在職中の秘密保持義務の存否だけを問題とするのであれば、就業規則に秘密保持義務を定める必要はないように思われます。
 
 もっとも、就業規則に秘密保持義務の内容を明確にしておくことで、従業員の誤解を防ぎ、かつ注意を喚起するうえでも有益です。
 
 また、退職後の労働者については、明示的な特約がない場合でも信義則上の義務として秘密保持義務を負うと判断した裁判例もありますが、解釈上の争いとなり得るところです。したがって、退職後の秘密保持義務についても視野に入れているのであれば、無用な争いをさけるためにも、就業規則に秘密保持義務に関する規定を定めておいた方がよいでしょう。  
 
 そのほか、秘密保持義務違反を理由として従業員に懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則で懲戒事由を定めておく必要があります。 秘密保持義務に関する規定を定めておけば、「就業規則その他社内規則に違反したとき」などの懲戒事由によって懲戒処分を行うことができるようになりますが、規定がなければ、会社の秘密情報を漏えいした従業員に対し懲戒処分を行えないという事態にもなりかねません。

 したがって、懲戒処分の場面における不都合を回避するためにも、就業規則で秘密保持義務について規定するメリットはあります。 

秘密保持・競業避止に関するご質問4 従業員の入社にあたり秘密保持誓約書の提出を求めようと考えています。その際の注意点は何ですか。

従業員の入社にあたり秘密保持誓約書の提出を求めようと考えています。その際の注意点は何ですか。


 

 就業規則に秘密保持義務に関する規定が定められていたとしても、その内容は一般的抽象的な内容にとどまるのが通常です。
 そのため、最近は、秘密情報の範囲や義務の内容をより具体化した秘密保持誓約書の提出を求めることが増えています。

 秘密保持誓約書の提出を求める際の注意点としては、①秘密保持義務の内容を特定すること、②秘密保持義務の内容を従業員に対し十分に説明すること、などが挙げられます。

 まず、秘密保持誓約書における秘密の定義が抽象的であり、従業員から見て秘密保持の対象となる情報とそうでない情報が区別できないような場合には、秘密保持誓約書が公序良俗に違反して無効となる場合があります。
 もちろん、秘密保持誓約書を提出した時点で将来的に発生し得る秘密の内容を全て具体的に特定することは困難ですが、ある程度は具体的に秘密保持の対象を定める必要があります。

 また、従業員が秘密保持誓約書の内容を理解していなかった場合には、事後的に秘密保持誓約書の効力が争われる可能性があります。
 そのため、従業員に対し、秘密保持義務の内容と義務に違反した場合の効果を十分に説明した上で、秘密保持誓約書に署名押印してもらうように気を付ける必要があります。

  なお、具体的な秘密保持誓約書の内容については専門的な知識が要求されます(例えば、秘密保持義務違反に対するペナルティとして一定額の違約金を支払う旨を規定したとしても、労働基準法16条に違反して無効となる可能性がある、等)。

  したがって、秘密保持誓約書を作成する際には、一度専門家に相談することをお勧めします。

秘密保持・競業避止に関するご質問5 当社では、退職後の従業員が当社の顧客情報を漏えいするという事態がありました。不正競争防止法による規制だけでは不十分なのでしょうか。

当社では、退職後の従業員が当社の顧客情報を漏えいするという事態がありました。不正競争防止法による規制だけでは不十分なのでしょうか。


 

 不正競争防止法上、「営業秘密」として保護を受けるためには、
①秘密として管理されていること(秘密管理性)、
②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、
③公然と知られていないものであること(非公然性) の3つの要件を充足する必要があります。

  このように、不正競争防止法上の「営業秘密」は厳格な要件が定められており、会社にとっていかに重要な情報であっても、「営業秘密」として保護を受けられない可能性があります。

  例えば、実務上、「秘密管理性」が認められるためには、㋐当該情報へのアクセスが制限されていること、㋑当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていること が必要とされます。

 したがって、顧客情報のような会社にとって重要な情報であっても、顧客情報が掲載されたファイルが顧客情報を管理する担当社員のデスクの上に置いてあり、社員であれば誰でもファイルを閲覧できる状況である場合や、顧客情報が保存されたデータにパスワードが設定されていてもパソコン画面の脇にパスワードが張られている場合には、当該情報へのアクセスが制限されているとはいえず(㋐を充足しない)、「秘密管理性」が認められない可能性が高いといえます(=「営業秘密」にあたらない。)。

  もっとも、秘密管理を徹底するとコストがかかりますし、社員数が少数の会社の場合には業務な円滑な遂行を妨げることにもなり得るため、重要な会社の情報であっても、その全てに厳格な秘密管理を徹底することは現実的ではありません。

  そうすると、顧客情報のような重要な情報であっても、不正競争防止法による保護を受けられないという事態になり得ますから、秘密情報の外部流出に対応するためには、不正競争防止法の規制だけでは不十分といえるでしょう。

  そして、このような不正競争防止法上により保護されない秘密情報の外部流出を防止するためには、従業員との間で秘密保持契約を締結しておくことが賢明です。

  なお、顧客情報が改正個人情報保護法の「個人情報データベース等」に該当する場合(ただし、平成29年5月30日以降に限る)には、情報を漏えいした従業員(元従業員も含む。)は、刑事罰の対象となりますので、秘密保持に関する社内教育を実施し、情報漏えいが刑事罰の対象となり得ることを指導することも有用といえます。

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