共同企業体の企業に対して未払いの工事代金を求める訴訟を提起し、これが認められた事案
〈事案の概要〉
A社は公共工事の下請けを主要な業務とする建設会社でした。
A社は、これまで取引していた公共工事の元請会社である「B社」より、弁護士を通じ「資金繰りが悪化したから倒産する」と連絡されたので、何か取れる手段はないか、とのことでした。
当事務所は、売掛金の回収見込の調査を含めた依頼をA社から受任しました。
まず、当事務所から、B社の代理人弁護士に連絡をとったところ、B社は大変な負債を抱えていた上に、資産が全くない状況である可能性が高いことが判明したため、A社の売掛金をB社から回収するのは困難と判断しました。
そこで、A社にB社が発注していた工事が、公共団体から発注された公共工事であることに着目し、発注形態を調査したところ、元請である公共団体は「共同企業体」(ジョイントベンチャー)に対して発注をしていることが判明しました。
そこでB社と共同して公共工事を受注していた「C社」に対して、A社に対する売掛金を支払うよう請求する内容証明を発送したところ、C社は「いわゆる 『ペーパージョイント』であり、共同企業体の実態がないので、支払いの義務はない」と請求に応じませんでした。
そこで、「共同企業体の連帯責任」を首位的請求とし、予備的請求として「共同企業体であるという外観を作出したことに対する責任」を根拠としてC社を相手に裁判を起こしました。
裁判では「共同企業体としての実態があったか」「なかったとしてもそのような外観をC社が作出していたといえるか」「またその外観の作出にC社が責任を負うか」といったことが争われました。
当事務所は公共工事を発注した公共団体に対して、C社が提出していた共同企業体の「協定書」や「その他公共工事に関して共同企業体が公共団体に提出した書類」を、裁判所を通じて取り寄せました。
またB社やC社の代表者、現場に姿を見せていたC社の従業員を証人として申請し、証人尋問を行いました。
裁判所は、今回の共同企業体がペーパージョイントであることを認めましたが、共同企業体が存在するかのような外観を作出したことについてC社は責任負わなければならないと判示し、A社の請求を認めました。この判決には不服申したてはなされず確定しました。
〈ポイント〉
・直接の取引先が倒産しても、元請の「受注形態」によっては回収できる可能性がある場合があります。
・ペーパージョイントであることを前提にしても、なお責任を負うという法律構成によって裁判所に請求を認めさせることに成功した事案です。
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