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「期限の利益喪失条項」とは、どのようなものですか。

 「期限の利益」とは、期限が来る前に債務の履行を請求されないという債務者の利益です。すなわち、債務の履行について期限を定めた場合、履行をしなければならない債務者の視点から見ると、「定められた期限が来るまでは債務を履行しなくてよい。」という利益があることになるため、「期限の利益」と呼ばれています。
 「期限の利益喪失条項」とは、一定の事由が生じた場合に、債務者がこの「期限の利益」を失い、直ちに債務の履行をしなくてはならないとの定めを言います。

 例えば、期限の到来までの間に債務者の財産状態が悪化した場合に、債権者側が期限の到来まで債権の行使をできないとすると、債権者に不利益を与えることになり、当事者間の公平を害するため、「期限の利益喪失条項」を定め、一定の事由が発生することにより、債権者が債務者に対して直ちに債務の履行を請求することができるようにするものです。
 期限の利益の喪失により、債権者としては、金銭債務の履行請求のほか、担保権の実行、相殺、契約解除などの手段をとることが可能になります。
 期限の利益喪失については、民法137条に定めがあり、①債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、②債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき、③債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないときのいずれかの場合に、債権者は期限の到来を主張し、直ちに債務の履行請求をすることができるとされています。

 契約書において期限の利益喪失条項を定める場合には、債権者の債権保全のため、この民法の定めよりもさらに広く期限の利益を失うことになる事由を定めたり、債権者の主張がなくても当然に期限の利益を失うようにするなどの内容にすることが多いです。
 期限の利益喪失条項において、どのような場合に期限の利益を失うこととするか(「期限の利益喪失事由」をどのような内容にするか。)については、個別の契約ごとに検討する必要があります。

 具体的には、債務者が倒産状態に陥った場合や、債務者が契約書の条項に違反した場合、債務者が強制執行を受けた場合などに、債務者が期限の利益を失い、直ちに債務の全部を直ちに弁済しなければならない、との定めがされることがあります。
 期限の利益喪失条項を定めるにあたっては、期限の利益を喪失する事由があった場合に、当然に期限の利益が喪失するものとするか(いわゆる「当然喪失」型。)、債権者の請求により期限の利益を喪失するものとするか(いわゆる「請求喪失」型。)についても検討する必要があります。
 一般的に、当然喪失型の事由としては、期限の利益を喪失する当事者の信用状態の悪化が客観的に明白かつ顕著で緊急性のある事由は当然喪失型に、当然喪失型に相当するほどの状況ではなく、今後も取引を継続するか否か(すなわち、債務者の期限の利益喪失を請求するかどうか。)について債権者に判断を留保することが相当である事由については請求喪失型に分類されるべきでしょう。

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