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行方不明で連絡が取れない従業員の妻に、未払い分の賃金を支払っても良いでしょうか。

当社に、行方不明で1か月間以上連絡が取れない従業員がいます。先日、従業員の妻から、未払い分の賃金の支払いを求められたのですが、妻に支払ってもよいのでしょうか。

 労働基準法は、代理受領による中間搾取等を排除するため、賃金は、労働者に直接支払わなければならないと規定しています(賃金の直接払いの原則)。

 したがって、労働者の代理人に賃金を支払うことは、賃金の直接払いの原則に反し、原則として違法となります。

 もっとも、使者(本人が意思決定したことを伝達ないし表示する権限のみを与えられた者)に対して賃金を支払うことは、差支えありません。 問題は、代理人なのか使者なのかをどのように区別するかです。

  この点は一般に、「社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生じるものか否かによって区別される」とされており、本人の意思に反するかどうかが実際上のポイントとなります。

 例えば、労働者が病気で欠勤している場合に、労働者に代わって賃金を受け取りに来た妻に、会社が賃金を支払うことは、使者に対する支払いとして、直接払いの原則には反しないと考えられます。

 一方、労働者が行方不明で、本人の意思が不明であるような場合には、妻に対する支払いであっても、使者に対する支払いとはいえず、直接払いの原則に反すると判断される可能性があります。

 したがって、リスクを回避するためには、妻に対して賃金を支払うべきではありません。

 また、仮に、残された家族の生活等に配慮して、妻に賃金を支払うという選択をする場合にあっても、後日労働者から会社に賃金を請求させないことや、労働者が請求し、会社が二重払いをしなければならない状況になった場合には、受領した賃金を返還することを妻に約束させ、その旨を記載した誓約書を取り交わす等、慎重に対応することが望ましいでしょう。