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過重労働による労働者の健康被害を防ぐために、どのような措置を講じる必要があるでしょうか。

今日、過重労働による労働者の健康被害が問題になっていますが、これを防ぐために、使用者としてどのような措置を講じる必要があるでしょうか。

 過重労働による過労死をはじめとする様々な健康障害を未然に防ぐため、厚生労働省では、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」を策定し、その中で、以下のように、事業者が講ずべき措置を定めています。

1 時間外・休日労働時間の削減

 時間外労働は、本来臨時的な場合に行われるものであり、時間外・休日労働が長ければ長いほど、労働者の健康リスク(脳・心臓疾患の発症リスク)は高まります。事業者は、労働者の労働時間を適切に把握するとともに、36協定の内容を、労働時間延長の限度を定めた基準に適合したものとすることが求められています。

2 年次有給休暇の取得促進

 有給休暇の積極的な取得により、心身の疲労回復、日常的な心身の健康保持増進活動を促進させ、労働者の健康リスクを下げることにつながります。

3 労働時間等の設定の改善

 労働者の個別の事情に応じた配慮や、所定労働時間の削減、休暇の付与などにより、労働者の仕事と生活の調和を実現することが求められています。

4 労働者の健康管理に係る措置の徹底

 労働安全衛生法により、一定規模を超える事業場の事業者には、過重労働による健康障害防止のための監督指導(産業医の選任、衛生委員会等の設置など)とともに、健康診断の実施と、健康診断実施後の措置が、義務付けられています。

 また、同法により、一定の長時間労働により疲労の蓄積した労働者が申し出た場合、医師による面接指導等の実施と、面接指導実施後の措置も、義務付けられています。

 これらの健康管理措置の一部には、違反した場合の罰則も設けられています。 面接指導等の対象とならない労働者についても、脳・心臓疾患発症の予防的観点からすれば、面接指導やそれに準じた必要な措置を講ずるよう努めるべきでしょう。

 その他、医師等による「心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)」の実施義務など、使用者には、安全配慮上の様々な義務が課されています。

 労働者の健康管理が適切に行われていない結果、健康被害が生じた場合、使用者の安全配慮義務違反として、民事上の損害賠償責任を問われるケースもあります。使用者としては、労働者の健康に十分配慮した労務管理を行う必要があるでしょう。