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今年度の業績が悪かった従業員の次年度の年俸を減額することの問題点

当社では、今年度から年俸制を採用しました。今年度の業績が悪かった労働者については、次年度の年俸を減額したいと考えていますが、何か問題が生じることはありますか。

就業規則において年俸制を採用すれば、直ちに賃金の減額が可能になるわけではありません。

年俸制は、賃金が年単位で定められることを意味するに過ぎず、直ちに毎年の賃金改定があることを意味するものではないからです。

業績評価に基づいて、賃金の減額改定をするためには、
①労働者と個別の合意をするか、②就業規則上賃金の改定が予定されていなければなりません。

 ①の場合、会社からの年俸額の提示に対し合意をするか否かは、労働者の自由であり、労働者が合意をする義務はありませんし、労働者の自由な意思に基づいてなされた合意でなければ無効となります。

②の場合、労働契約書や就業規則において、使用者が年俸額を改定することができる条項が定められており、かつ、その条項に合理性がある必要があります。

賃金改定の基準や下限などが全く定められておらず、使用者が恣意的に賃金を改定できるような条項は、合理性を欠き、無効と判断される可能性があります。

また、条項自体に合理性があっても、賃金減額によって労働者が被る不利益の程度、労働者の勤務状況等その帰責性の有無及び程度、賃金減額の動機及び目的、人事評価が適切になされているか、その他労使の折衝の事情などを総合考慮して、賃金の減額措置が無効とされる場合があります。

このような賃金改定の問題について、判断に迷った場合には、是非一度弁護士にご相談下さい。